白竹堂PRESS

その他 2022年08月31日

夏休みの最後を飾るイベント、地蔵盆

こんにちは、京扇子の白竹堂です。享保3年、1718年から京都で扇子屋を営んでおります。

京都の街中を歩いていると、あちこちの街角にお地蔵さんがいるのを見かけます。どのお地蔵さんもきれいな花が飾られていたり前掛けやきれいな色の布飾りが奉納されていたりして、お世話が行き届いているのがわかります。

お地蔵さんは子供の守り神とされているからでしょうか、時々手を合わせ深々と頭を下げている年配の方を見かけることも。きっとお孫さんがいらっしゃるのでしょうね。

さて、8月も終わりに近づくと、京都では地域のお地蔵さんの縁日「地蔵盆」が行われます。今回は、この地蔵盆についてお話しいたしましょう。

地蔵盆の準備と当日の様子

地蔵盆は、もともとは地蔵菩薩の縁日である旧暦の7月24日とその前日に行われるものでした。新暦でいうとだいたい8月24日とその前日ですね。各町(ちょう)の自治会が中心となり、開催されます。

とはいえ、最近は大人の事情もあり、8月24日に開催する自治会は減っています。だいたいは24日より前の土日に行うことろが多いようです。今年の場合は、8月20日・21日に開催される傾向が多いようでした(なお、あくまで私の周囲の話です)。

さて、地蔵盆を行う場合は、だいたい準備は5~6月頃から始まります。日程を決め、準備するものをリストアップし、必要なものを買い出したり、余興をお願いする人に連絡を取ったりします。

当日は、朝から町内(ちょうない)のお地蔵さんを改めてきれいにします。お供えをしたり前掛けなどのお供えを新調したりして準備ができたら、お地蔵さんの前や近くのスペースに日よけのテントを張りブルーシートを敷いて、人が集まれるよう整えます。

この「近くのスペース」というのが地域によって実にさまざまな。もともとお地蔵さんの近くに集まれるような広場を作っているところもあれば、集会所や近くの駐車場、公園などを使うケースもあります。町(ちょう)によっては、お地蔵さんの前の路地を使うこともあります。

もちろん無許可で公道や駐車場などは使えませんから、しかるべき許可を取っています。地蔵盆の時期に京都の路地を自動車で走っていると、たまに地蔵盆による通行止めに行き当たってびっくりするかもしれません。

夏休みの最後の、のんびり楽しい2日間

スペースの準備ができたら、町内の子供たちを中心に、親や子供会・町内会の役員などが集まってきます。大人はお地蔵さんにお供えをして帰っていきますが、子どもたちは日がな一日、数珠回しをしたり、おやつを食べたり、ゲームやビンゴ、くじ引きをしたりしてのんびり過ごします。

ときには、地域や大学のサークルがちょっとした余興をしてくれることもあるんですよ。たとえばブログ担当スタッフは学生時代ブラスバンドをしていたのですが、地蔵盆の時期はあちらこちらの町(ちょう)に出かけて子ども向けにアニメの主題歌を演奏していました。

子どもたちにとっては、地蔵盆は朝から晩まで近所の友だちと一緒に、おやつや飲み物付きでのんびり過ごせる、夢のような2日間。この日ばかりは、親に「宿題はした?」と声をかけられることもありません。「いつまでもゲームしてないの!」と怒られることもありません。

最近、京都の公立小学校は8月26日ごろから2学期が始まります。そのため、地蔵盆が開催されるのはだいたい夏休み最後の週末。子どもたちにとっては、夏休み最後のイベントです。楽しくも、ちょっと夏休みが名残惜しく感じる時間が流れます。

最近は少子化やコロナ禍の影響も……

最近は少子化の影響を受け、地域によっては地蔵盆に参加する子供がぐっと減りました。地蔵盆を主催する子供会や町内会の役員にも仕事を持つ人がほとんどになり、週末に休めない仕事をしている人も少なくありません。そのため、準備や当日のお世話を負担に感じる人も増えました。気候的には猛暑日が増え、屋外で集まることが危険になりつつあります。

このような事情から、最近は地蔵盆を1日だけにする町内会も増えました。集まる場所も屋外ではなく、クーラーの効いた集会所などで行うケースが増えています。

さらに新型コロナウイルス感染症の流行も大きな影響を与えています。京都市が2021年に行った「地蔵盆に関するアンケート調査(コロナ禍への対応)」によると、アンケートに答えた町内会のうち「地蔵盆を中止する」と回答した町内会は41%にのぼりました。

京都市は、平成26(2014)年、地蔵盆を「京の地蔵盆-地域と世代をつなぐまちの伝統行事」として“京都をつなぐ無形文化遺産”に指定しました。確かに、地域の幅広い世代の人たちが一堂に集まる行事はなかなかありません。晩夏の風物詩として、地域行事としての地蔵盆の存続は大きな課題のひとつとなっています。

京都の街角や路地でお地蔵さんを見かけたときにこんな話を思い出していただけると、少し京都の日常風景が垣間見えるのではないかと思います。