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その他 2022年06月15日

夏越の祓と水無月と。京都の夏はもう目の前

こんにちは、京扇子の白竹堂です。享保3年、1718年から京都で扇子屋を営んでおります。

1年の前半が終了する6月。この時期に神社に行くと見られるのが、大きな「茅の輪(ちのわ)」です。6月30日に行なわれる「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神事では、この輪をくぐって半年の厄を落とし、無病息災を願います。

茅の輪くぐりはいつできる?

京都の神社では6月に入ると、あちこちの神社に茅の輪が置かれます。置かれる期間は神社によって異なり、6月に入ったらすぐ置く神社もあれば、中旬を過ぎてからのところ、月末近くになってからのところもあります。設置されている茅の輪は、自由にくぐって構いません。ぜひくぐって、厄を落としましょう。

以前は、6月30日の夏越の祓当日に一般の参拝者も神職さんと一緒に茅の輪をくぐれたところもあったようです。しかしここ2年ほどは、コロナ禍の影響もあり、ほとんどの神社で一般の参拝者は神事に参加できないようになっています。

いつから茅の輪が置かれるのか、夏越の祓に参加はできるのか。お目当ての神社がある場合は、公式ホームページで確認しておいたほうがよさそうですね。

また、最近は茅の輪から茅(かや)を抜いて帰ってしまう人も多いそうです。縁起物と思っているのかもしれませんが、茅の輪には、くぐった人たちが落とした厄がこもっています。少々、縁起物とは呼びにくいのではないでしょうか。

神社によっては茅の輪とは別に持ち帰り用の茅を用意しているところがありますので、できればこちらの茅をいただいたほうが良いでしょう。茅の輪のお守りを授与している神社もありますので、こちらを授かって帰るのも良いと思います。

茅を厄払いに使う理由

茅の輪で厄払いをするのは、日本の神様、素戔嗚尊(すさのおのみこと)にまつわる神話に由来しています。

備後国(びんごのくに=今の広島県東部)を旅していた素戔嗚尊は、ある兄弟に一夜の宿を求めました。裕福な弟はその頼みを断りましたが、貧しい兄の蘇民将来は快く泊め、できるかぎりもてなします。

素戔嗚尊はそのお礼に「『蘇民将来之子孫』と言い、茅の輪を腰に付けていれば疫病を免れることができる」と言い残して去りました。やがて蘇民将来たちが住む地に疫病が流行りましたが、素戔嗚尊の教えを守った蘇民将来の娘は疫病を免れ、生き延びることができたそうです。

この話にあやかって、茅の輪を使って厄を落とし、疫病から逃れようという風習が生まれたと言われています。

ところで、「蘇民将来之子孫」と「疫病」という言葉にピンときた人は京都通かもしれません。そう、7月に行われる祇園祭でもこの2つの言葉が出てきます。祇園祭については7月にいろいろお話ししますので、どうぞお楽しみに。

夏越の祓には欠かせない京都の和菓子「水無月」

京都には、夏越の祓に欠かせない和菓子があります。ういろうの上に小豆を散らしたお菓子「水無月」です。白いういろうを使ったあっさり味の水無月のほか、お茶の風味がする緑の水無月や、黒糖を使ったコクある甘みの黒っぽい水無月があります。

京都ではとてもポピュラーなお菓子で、6月に入ると和菓子屋さんはもちろん、スーパーなどにも並びます。夏越の祓当日の6月30日になると「今日は夏越の祓です。暑気払いに水無月を食べましょう」という宣伝カーが走っていることも。

全国的に見ると水無月はあまりなじみのないお菓子のようなのですが、京都の人にとっては「夏越の祓の日といえば水無月」と、この2つはワンセット。6月に入ると早めになじみの和菓子屋さんに予約を入れる人だって少なくありません。

控え目な甘さと、ういろうのつるりとした食感と小豆の歯ごたえが面白い水無月。6月に京都にお越しの際は、茅の輪くぐりと合わせてぜひ召し上がっていただければと思います。

さて、これからどんどん暑くなっていきます。今年は電力事情が厳しいようで、節電要請も出るそうです。電気を大切に使い、暑さ対策にも気をつけて、夏を乗り切っていきたいですね。